仕組み債に手を出したらなぜいけないのか?
野村證券から年利3.6%の新規社債の発行のお知らせが来たのでMixiに情報を書いたら、年利15.5%という数字にひかれたからだと思うが、以下の仕組み債はどうかと質問された。
「みずほインベスターズ証券、円建日経平均株価連動デジタル・クーポン債券(ノックイン型 期限前償還条項付)」
http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=infoseek_jp&sid=a3stZmu9b.Oo
仕組み債は絶対に手を出してはいけない金融商品だと思っている。日経平均18,000円の時に、中央三井のプレミアムステージシリーズにうちの母親が手を出して、サブプライム問題で見事ノックインされたせいもあるが、客観的に見てなぜだめなのかを分析してみた。
わかりやすくするために、以下の前提条件をつけた。
(前提条件)
2008/12/24の日経平均を8600円:当初日経平均株価
期限前償還の判定日を年2回(2月,8月)とする(中央三井と同じパターン)
2009年2月は判定日なし
元本100万円の投資
今後の株価を予測することなど全く意味のないことだが、わかりやすく分類するために、これから5年後の日経平均の推移予測としていくつかのシナリオを立ててみた。
- シナリオ1) 2008/10/28のバブル崩壊後の安値6994円を底として、5年後まで右肩上がりに回復
2009年8月の判定日に8600円を越えているはずなので、期限前償還される。
元本保証されるが、年利15.5%(税抜き12.4%)の8ヶ月分の約8万円のリターン。
- シナリオ2) 2009年夏に一旦6000円台で底を打ち、2010年8月に8600円台まで回復する
ノックインは回避。
2010年8月の判定日に8600円を越えているので、期限前償還される。
元本保証されるが、年利15.5%(税抜き12.4%)の20ヶ月分の約21万円のリターン。
- シナリオ3) 8000円〜14000円のボックス相場
ノックインは回避。
判定日に8600円をいつ越えるかによる。
当初日経平均株価よりも平均値が高いレンジ内のボックス相場では、期限前償還が
比較的早く来ることが予想される。シナリオ1かシナリオ2程度のリターン。
- シナリオ4) 景気後退がさらに進み、右肩下がりで株価低迷するが、4300円は割らない
ノックインは避けられるが、一度も判定日で8600円を越えないので、期限前償還ならない。
元本保証されるが、右肩下がりなので満期償還時には6450円を割る可能性が高い。
2009/3/19以降は年利0.5%となり、5年の定期預金の方がよい。
ノックイン確実。5年後に8600円に戻る可能性は低い。
償還日に6450円に戻らなければ、2009/3/19以降は年利0.5%しかもらえないし、
元本保証ならず。
上記シナリオでは、以下のようになる。
シナリオ1 : 元本保証。期限前償還。
シナリオ2 : 元本保証。期限前償還。
シナリオ3 : 元本保証。期限前償還。
シナリオ4 : 元本保証。満期償還。年利0.5%。
シナリオ5 : 元本割れ。満期償還。
シナリオ5はない(希望的観測もあるけど)と思っているが、シナリオ1〜4はどれも有り得ると思っている。シナリオ1は楽観しすぎだと思うが。
シナリオ1〜3は元本保証されるが、期限前償還されるので、リスクに比べてリターンが抑えられてしまう。シナリオ4はネット銀行の定期預金の方がまし。
では、5年満期で年利15.5%となるパターンとしてどういうシナリオがあるか、あえて考えてみる。
- シナリオ3') 5000円〜9000円近辺のボックス相場を繰り返して、判定日にはたまたま8600円を割って期限前償還が避けられた場合
下値が5000円近辺に来たら、売りが売りを呼ぶパニック相場となり、
一時的にノックイン価格を割る確率が高くなりそう。ノックイン近辺は狙われやすい。
また、償還日に6450円を越えていないと年利15%が約束されないので、このレンジでは
運を天にまかせるしかない。
こう考えてみると、日経平均連動型の仕組み債は上昇相場では期限前に償還されて利益を勝手に確定されてしまう。下降相場では、ノックインまでいくか、ノックインが避けられて元本保証されても、満期まできわめて低い利益しか得られない。ボックス相場では、購入時の価格よりも平均値がかなり下でなおかつノックインを回避しつつ、償還日に75%割れを避けるような偶然に頼らないと満期まで最高利益を得られない。
すなわち、ハイリスクローリターンな商品と考える。
素直に1321を買った方がよいと思う。