かしゆかがクララに。

ちょっと前に娘が突然歩けなくなった。

昼寝の時間がいつもより遅く、俺が帰宅してから無理矢理起こしたが、このくらいはいつものこと。眠気覚ましにあまちゃんのオープニング曲をかけたら、いつもの定位置であるベビーチェアに行こうとして、突然転んだのが最初のきっかけ。

足腰の強い娘は外で歩いても一度も転んだことがないが、その時は寝起きで足がもつれたと思い、抱っこして椅子に座らせた。その後、椅子から降ろしても立てずに泣いて、娘はもう絶対に立たなくなって、移動は座ったままになる。

子供の異変にようやく気づいた嫁は、心配になって、すくすく子育てで放送していた子供相談室にかけようと言う。電話してみると、家の近所の救急医療センターの連絡先を教えてくれただけだった。

小児科と整形外科がある救急病院は、家からは1時間以上かかる場所しかなく、骨を折ったような雰囲気もなく、立たせなければ痛がって泣くこともないので、とりあえず寝かせて翌日病院に行くことにする。

午前中はどうしても外せない仕事があったので、嫁が近所のこどもクリニックに連れて行った。病院では嫁と離れたら、泣いて歩いたということで、股関節脱臼でもないので、先生は様子見しましょうという診察だった。

とりあえず、午後休みにして、帰宅してみたが、家に帰るとやっぱり歩かないという。ネットで調べると、同じような症状の子がいたが、風邪で熱があって関節炎が原因だったそうだが、うちは熱があったわけではない。ただ、一週間で治ったというのが、唯一の希望の光。

原因がよくわからないし、やはりセカンドオピニオンは必要だろうということで、午後の診察もやっている近所の総合病院に行く。受付で症状を言うと、うちは小児科と整形外科が分かれていて、ちゃんと治療できないかもしれないから、小児整形のあるもっと大きな病院に行くように勧められる。受付時間の終了間際で面倒な患者を診るのが嫌がったのか、先生の顔すら拝めないで、追い返された。

普通の親ならキレるところだが、嫁と俺も性格的に優しく冷静なので、別の病院に行くか相談する。ネットで調べても今から受付できる総合病院はなく、あきらめて帰ろうと思ったが、駐車場近くに普通の整形外科を見つけた嫁がダメもとで入ろうと言う。

小児科でないから断られるかと思ったが、受付のおばちゃんは名前を書いてと何事もないように受け付けてくれた。個人病院だが、近所の老人のリハビリ集会所みたいで、昔ながらの町医者だった。思ったより待たずに、診てもらったが、寝かせても足が普通に動くので、何も問題ないと断言する。

念のためレントゲンを撮られたが、骨に異常はないし、成長線もあると言う。娘は泣いて暴れたが、還暦はいっているであろう先生に元気だから、あまり心配しないでくださいと言われた。骨を折っている雰囲気はなかったので、娘を被曝させたのは不本意ではあったが、嫁はレントゲンを見て安心したようだ。受付でサトウ薬局のケロちゃんの指人形をもらって、親子で喜んだ。

その後も娘は立つと違和感を感じるのか、立たずにひざだけ動かして座ったまま移動するのみ。アンパンマンの乗り物を車椅子替わりに使ったりする。

整形外科の先生は電話までくれて、もしかしたら甘えて歩かないだけかもしれないから、あまり心配しないでと言ってくれた。

その内、2,3秒立つようになり、つま先立ちで少し移動できるようになっていたが、6日後の夜に父と絵本を掴まり立ちしながら読んでいたら、自然と立って歩けるようになった。

立てなかったクララが立った、ということで、夫婦で感激。娘がこのまま一生歩けなくなるとは思ってなかったが、やはり歩ける姿を見ると、よかったと思う。

原因ははっきりとはわからないが、娘は急成長期だったので、上半身が急激に大きくなって、膝が一時的に支えきれなくなったのではないかと思う。単に甘えではなく、本人の違和感があって、しばらく立つのを慎重になっていたのではないかと思われる。