最近読んだ本
- 作者: カーターディクスン,Carter Dickson,宇野利泰
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2002/04
- メディア: 文庫
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やたら挑戦的なタイトルが気になるが、入手できた作品で一般的に評価が高い作品がだんだん少なくなってきたので、読んでみる。これが予想以上に面白くてほとんど一気(俺の場合2〜3日の意)に読んでしまった。
自分は読心術の能力があると自称する男に、自分の心の中を次々と暴かれて驚きと猜疑心を持つ、ある館に招かれた登場人物たち。そして、その男は主人が20時に死ぬと宣言する。その予言通りに主人が死ぬと、男は自分は他人を念力で殺すことができるが、法律は自分を裁けないと開き直る。作家である死んだ主人の妻は、男の嘘をあばくために男に挑戦し、返り討ちにあって死んでしまう。
おなじみのHM卿とマスターズ警部のコンビが登場するが、新聞に念力(テレフォース)が大々的に公表され、大騒ぎ。
テレビドラマの「トリック」でもこういった超能力をテーマにした話があるが、トリックそのものは何かの二番煎じだし、謎ときの醍醐味はない。現代の世相を反映したのか、コミカルな演出をしていて、うさんくさいいかさま師と超能力を信じない売れない手品師の対決を物語のメインとしているから、それは仕方ないが。
しかし、カーはこういう超能力を題材にした不可能殺人事件を扱いながらも、あくまで本格推理小説として、トリックを直球でぶつけてきて、照れ隠しも何もないのが好感もてる。
しかも、HMによる謎解きはエポックの野球盤の消える魔球のように、ストレートと思って振ったバットに当たらずに消えてしまうような鮮やかなオチなので、手品の種を明かされた時に持つような不満はあまり感じない。
殺人トリックは今となっては手垢がついた古典的な手法だし、細部には粗があるし、筆者註を入れたあからさまなミスリードはあるが、面白ければこういうのもありだと思う。