最近読んだ本

僧正殺人事件 (創元推理文庫)

僧正殺人事件 (創元推理文庫)

この本か、または「グリーン家」が実家にあったと思うが、小中学生にはコナン・ドイルモーリス・ルブラン新潮文庫版はなんとか読めたが、これは翻訳が難しいのと話が長くて読めなかった記憶がある。

ある本で犯人がネタバレされているので、探偵小説の古典的名作ということもあり、先に読むことに。近所の本屋では入手できなかったので、図書館で借りる。

僧正の意味が初めてわかる。単語の意味ではなく、小説内の意味するところ。昔から何でこんなタイトルを付けるか不思議だった。「マザーグース殺人事件」というタイトルになる可能性もあったみたいだが、もしそのタイトルだったら読まなかったかもしれない。こちらの方が本家かもしれないが、見立て殺人はちょっと食傷気味なので。

数学者が出てくるが、これを読むと、タイトルに数学が出ておきながら、内容が伴わない森博嗣(*)の「笑わない数学者」の薄っぺらさ加減が際立つ。数学は不得意なので、「僧正」の内容は半分も理解できていないが。

トリックというトリックは特にないし、話が長くて冗長に感じるが、ファイロ・ヴァンス物という探偵小説の王道を作ったという意味では、確かに読んでおくべき古典作品であった。ヴァン・ダインはデビュー当時匿名作家だったらしいが、解説を読んで初めて知った。

(*)S&Mシリーズの長編は全部読んだし、別に嫌いではない。内容はミステリというより娯楽恋愛小説として読んでいる。

これもある本のネタバレ。入手できないので、図書館にあったジュブナイル本を借りる。
読んだのは「僧正」より先で、ファイロ・ヴァンスの気取った態度がどうも好きになれなかった。内容は全く違うが、美術館の殺人ということで、カーの「アラビアンナイトの殺人」の記憶が強いし、読んでからだいぶたつので、こちらの印象は薄い。

シャム双生児の秘密 (新潮文庫 ク 2-5)

シャム双生児の秘密 (新潮文庫 ク 2-5)

これまたある本のネタバレで、…以下略。
エラリー・クイーンは日本ではミステリ作家にファンが多いが、どうも昔から肌に合わない。中学生頃に読んだバーナビー・ロス名義のドルリー・レーンの4部作がその原因っぽくて、本家エラリーはそうでもなかったような気もするが、いい機会なので、久しぶりに読んでみる。国名シリーズは「オランダ靴」以外全く記憶がない。

シャム双生児というと乱歩の「孤島の鬼」かよ、というイメージがあったが、微妙に内容が近いのに驚く。乱歩の方が早いはずだが、まさかクイーンが真似したということもなかろう。

一部ではこの作品がクイーン作品の中でも評価が高いと聞き、驚く。山火事というクローズドサークルの状況もあるが、クイーン親子のドタバタ劇がうんざりするのと、クイーン青年がダイイングメッセージのこじつけを真面目に推理しているのにはあきれてしまう。鯨統一郎のように、ギャグでダイイングメッセージを題材として取り上げる小説はもっとひどいと思うが。こういう小説があるから、アリスのような作家がダイイングメッセージを平気で推理小説に書くのだと思って、クイーンの罪深さを少し恨んでしまう。

これはネタバレされてないが、「チャイナ橙」の話も出てきていたし、たまたま10数年前に古本を買っていて、読まずに積んでいたので、いい機会なので、続けて読んでみる。

なぜか角川文庫版。他社は直訳で「チャイナ橙の謎」としていて、「中国切手殺人事件」が国名シリーズかどうかわからず、思わずググってしまった。

犯人は途中でわかってしまったが、動機、トリックはわからなかったというか、こんなのはわかりたくないような内容。西洋文化東洋文化の違いがアメリカ人からどう見えるかは想像できなくもないが、中国の書き文字の並びと、殺人現場の状況をこじつけて見るクイーンの見立てにはあきれてしまう。クイーンを従来の探偵物ヒーローとして書かない意図はわからないでもないが、そんな魅力もなく実力もない登場人物が、事件簿としてシリーズ化することに疑問を覚える。

ダインやカーの系統をつぐ、笠井や二階堂は読後感がよいが、クイーン派の綾辻やアリスにいつも違和感を持つ理由がなんとなくわかってきた。