赤後家の殺人
- 作者: カーター・ディクスン,宇野利泰
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 1960/01/15
- メディア: 文庫
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原題が"THE RED WIDOW MURDER"だから邦題は直訳だが、タイトルがここまで意味不明な作品も珍しい。
作中で「赤後家部屋」を「ギロチン部屋」と称している登場人物がいるが、作品後半にガイがギロチンの家系の物語をして初めてわかる意味だし、「赤後家」の説明は読んだ限り全く触れられていない。
想像すると、「一人で入った者は必ず死ぬ部屋」→「毒の仕掛けがある部屋」→「背赤後家蜘蛛(Red Widow Spider)のように巣に入った虫を毒で殺す」という連想から来た部屋の名称だと思われる。トリックが犯人が毒蜘蛛を部屋に放ったというオチだと、タイトルでネタばれしてしまう最悪のミステリとなるが、カーに限ってはそんなことは…ない。
それはそれとして、「一人で入った者は必ず死ぬ部屋」という発想はすばらしすぎる。
こんな家が現実にはあるわけないし、同じ部屋で4人も死んでいるのに、トランプのカードで一番強い人間が、一人で2時間入るゲームをやるなんて全くミステリならではの発想。こんな話が現実にあるわけがないと一笑すればそれまでの話だが、カーらしくて好きだ。
関係ないが、姪と黒ひげ危機一髪を遊んでいた時にルールマニュアルを読んだら、ルールとして海賊を飛ばした人が負けというルールと、海賊を飛ばした人が勝ちというルールの両方があるようだ。本来は飛ばした方が勝ちみたいだが、びっくり箱のような驚かされる面もあるので、飛ばした方が負けみたいな感覚もわからないでもない。剣を当たりの穴に刺す方が確率的に低いので、姪とは本来のルールでやっていた。
しかし、毒に当たるチャンスがもらえるのが勝ちという発想にはどうしてもならない。アメリカの開拓者の発想なんだろうか?
密室トリックの基本中の基本だが、マスターズ警部のトリック実験などに混乱させられてまたしても騙される。犯人当てもカー作品ではほとんど全敗だが、他作家の某作品とかそれはないよという犯人じゃないので、腹も立たない。ストーリー展開のうまさのせいかな。