白い僧院の殺人

白い僧院の殺人 (創元推理文庫 119-3)

白い僧院の殺人 (創元推理文庫 119-3)

またしてもカー。見つからなかった文庫をネット通販でまとめ買いしてしまって、読みたい作品が溜まっているので、次々に(俺としてはかなり早いペースで)消化。

今回はカーター・ディクスン名義。クイズヒントでピント中島梓栗本薫のようなもんかと思ったけど、ちょっと違う。J.D.カー名義では契約の関係で年何冊という出版社の制限があって、別名義で出したらしい。

作風も特に違いは感じられない。ヘンリ・メリヴェール卿はカー名義のフェル博士の名前を変えただけの、性格や体型もほtんど同じキャラクター。

殺人事件の舞台となった白い僧院の別館の周りに新雪が積もり、死体発見者の足跡のみで出て行った足跡がない古典的な密室不可能犯罪。トリックは教科書に載っているような基本中の基本であるが、登場人物が可能性がありそうな推理を展開したり、突発的な出来事で話が急展開したりするため、読者はすっかりだまされてしまう。江戸川乱歩が絶賛したのも納得できる。

登場人物が次々に自分の推理を展開するのは、「虚無への供物」や「匣の中の失楽」に通じるものがあるが、やはり本格ミステリあってのメタミステリであり、ここまで切れ味よく読後すっきり感のある本格ミステリを見せつけられると、いかに良質なメタミステリも本格ミステリにはかなわないと思い知らされる。前述の2冊は個人的には好きな作品だが。

偶然に頼った話の展開に無理があるという批評もあるみたいだが、俺はあまり気にならなかった。