最近読んだ本

夏目漱石の「夢十夜」にインスパイアされたらしい作品で、芦原文学の中では異色とも言える。最初から夢とわかっているから夢オチのような狡さはないが、夢だと何でもできてしまうから、こういう夢物語は評価が難しい。

登場人物の会話など、全体的にな雰囲気がつげ義春の「ねじ式」に近いものもあり、俺はこういうのも好き。ただ、十作品の内、悪夢というか陰鬱になる作品も多く、読んだ後どんよりとなる。

俺は夢を見ながら、これは夢だと自覚したことは一度もないので、夢の中で「これは夢だ」と自覚するのがあることが多いのはちょっと違和感あった。

解説が作者の夢判断となっているのがどうかと思うが、フロイト精神分析とかやっている人がまだいて、ちょっとワロた。

夏目漱石の「夢十夜」は読んでなかったので、実家に帰省した時に探す。亡くなった親父は日本の古典文学とか大体持っていたので、夏目漱石とか有名ところは間違いなくあるはず。単行本ではなかったが、屋根裏の書庫を漁ってみると、幸い角川文庫の短編集が見つかったので、読んでみる。

「永日小品」など朝日新聞に連載していた初期の随筆は、今読むと当時の生活様子が出ているし、漱石の人柄がわかるので興味深い。妙に当て字が多くて注釈をいちいち参照するのが面倒で、なかなか進まなかったが、東北の素人文士の青年が金を借りに来る話の「山鳥」や倫敦下宿時代にシェイクスピア研究家を師とした「クレイグ先生」などが、心暖まりよかった。

また、「夢十夜」は毛色が変わった作品で面白かった。芦原版に比べると、総じて短い。特にオチもなく、本当に夢のような感じ。1/2の夢日記も本家「夢十夜」の方を意識して書いた。