ウロボロスの純正音律

ウロボロスの純正音律

ウロボロスの純正音律

ウロボロスシリーズ完結篇。前作もまだ新書までで文庫になってないし、新書になるのを待っていたらいつになるかわからないので、竹本健治作品としては初めてハードカバーで読む。
イラストが喜国雅彦、ブックデザインが京極夏彦

偽書」では、作者の実名小説と殺人鬼の原稿とトリック芸者シリーズの三重構造、「基礎論」では、実名小説と推理小説の二重構造だったのが、今回は実名小説のみでちょっと肩透かしな感じがした。喜国雅彦篠田真由美京極夏彦など、実名の登場人物がたくさん出てきて、実際に竹本が描いた漫画のアシスタントをやるので、一見リアルな話に見えるが、前作までみたいに明らかなフィクションの話が間に入らない分、逆にリアル感が薄れているように思う。前作ももちろんフィクションとして読んでいたから、別にそれ自体は問題ないけど。

でも、「偽書」では怪しい動きをする島田荘司、「基礎論」ではう○こを踏んでしまう笠井潔には笑ったので、今回もそういう意味では、京極夏彦の活躍ぶりには楽しませてもらった。一度、公の場以外で実物を見たことがあるが、トレードマークの黒の皮手袋を本当にしているし、変な人だと思った記憶がある。ちなみに、「邪魅の雫」は、「純正音律」を駅前の本屋に買いに行ったら、平積みしてあったので、とりあえず手に入れてはいるが、まだ読んでいない状態。

黒死館殺人事件」は読んだことない、というか青空文庫でちらっと冒頭を読んで、挫折する人が多いという噂に納得。囲碁は父が好きで実家に木製の碁盤があったが、俺は将棋までで囲碁はほとんど修得できずに父の相手になることさえできなかったくらいで、珍瓏の詰めは全く理解できなかった。肝心の純正音律は南澤の説明に終始してしまい、平均律を嫌ったハモりのすばらしさがいまいち共感できなかった。音の出るBOOKにして欲しい。

オチはあいかわらず拍子抜けする内容で、中井英夫を継ぐアンチミステリらしい終わり方。というか、京極堂は怒らないのか?あんな扱いされて。北村薫がなんであんないい扱いされるのかも不思議。