ユリイカ7月号「この小劇場を観よ!」特集

あちこちで話題になっていたので、買ってみた。
まず、ユリイカって地元の本屋になく今まで一度も見たことないので、大きいところにいかないとだめかなあと思って、先週横浜に行くついでに探すつもりでいたら、乗り換えの駅構内の本屋に普通に置いてあった。案外売れている雑誌なのね。

人に強制されるのが嫌いなので、このタイトルをつける編集のセンスを疑うし、サブタイトルの「なぜ私たちはこんなにもよい芝居をするのか」はちょっとないだろうと思う。ここ10年ぐらいは人気のある劇団とそうでない劇団の格差が広がっているように感じるし、関西の劇場が相次いで閉鎖されたことからも、小劇場全体の勢いが明らかになくなっているように感じられるのだが、そういう落ち目の小劇場が逆に強気でアピールすることで、何かを訴えようとしているのか?

余談だけど、惑星ピスタチオや遊気舎など、年に数回は観ていた関西劇団をここ最近はほとんど見なくなったのは残念。静岡出身の俺は関西の笑いの質はあまり理解できない面が多いのだが、なきゃないで寂しい。

シベリア少女鉄道主宰の土屋氏の日記で座談会が載ることを知っていたし、結構読めるという話を聞いていたから買ったけど、このタイトルを見ただけではきっと買わなかっただろう。


ケラと長塚の対談はわりと面白かった。阿佐ヶ谷スパイダースは名前を知ったころから、案外大きな小屋でやっていて、やはり親の七光りで出てきたんだなという色眼鏡で見てしまったせいか、観るチャンスを逸して今に至っている。今はあちこちの評判からもそういう偏見は取れているから、1回ぐらい観てもいいと思っているが。役者として客演では1回観たことある。

パラノイア百貨店が伝説となっているという話題があったけど、確かに観ている人は少ないだろうと思うが、当時は全く怖くないスプラッタをやっていただけで、今の劇団に比べると全く稚拙なストーリーとセットだった。血糊が飛ぶので、最前列にビニールシートを持たせた劇団を見たのもあれが初めてで、結構楽しんで観ていたが。

冒頭に話題に出ていたチェルフィッチュニブロールは両方とも観てないが、ケラと長塚の二人とも観てないのに語っているのもどうかと思う。でも、小劇場は全部観ようとすると、金と暇がいくらあっても足りないので、どんな熱心な小劇場ファンでも観劇日程を考える時にどの芝居を観るのをあきらめるか考えるはずだ。だから、居酒屋などで観てない劇団の話をするのは日常茶飯事。


座談会の4人の劇団(シベリア少女鉄道ポツドール毛皮族劇団、本谷有希子)は、どれも2回以上観ているので、なかなかツボを押さえている。この4つを観ている人は俺以外にも結構いるはず。ポツドールは俺的にはもういいという気分だが。

シベリア少女鉄道の過去の作品解説を土屋氏本人に書かせるというのはちょっとあんまりな企画だが、いろいろ裏話も書いていて面白かった。それより、ネタばれありでいろいろ書いている劇評家の方が推理小説を犯人ネタばれで評論しているみたいでちょっといただけない。ネタばれありと途中に書いてあるし、もう再演はしないだろうから、今更ばれても実質的には問題はないと思うが、観たことがない人が読んでも、文章ではさっぱり面白さがわかないし、書く意味がないと思う。メタ演劇である構造を説明するのなら、ネタばれをしなくても一言で終わるはず。

他にも劇評家たちの文章がいろいろあったが、かなりひとりよがりな内容が多くて、あまり読む気になれなかった。