最近読んだ本

青銅の悲劇  瀕死の王

青銅の悲劇 瀕死の王

トルコ旅行前に飛ばしてラストまで読んでいたが、帰国してから飛ばしたところを読みなおしたので時間がかかった。

矢吹駆シリーズは「オイディプス症候群」も文庫落ちまで6年以上かかっているので、今回も単行本で読んだ。矢吹駆シリーズと銘打ちながら、矢吹駆が出ないことはamazonのレビューで知っていたのだが、「バイバイ、エンジェル」「サマーアポカリプス」「哲学者の密室」のような探偵×犯人の哲学対決を期待するとがっくりする。「オイディプス症候群」のような普通の本格推理小説でもなく、「熾天使の夏」の世界観に一番近いかな。

笠井の分身である宗像が出てくる時点で気づくべきか。
笠井=宗像が書いた「バイバイ、エンジェル」=「昏い天使」の登場人物である矢吹やナディアが「昏い天使」を読んで、その本の話題を作者である宗像にするのは不思議な感じがする。竹本の「ウロボロスシリーズ」みたいなその構図は面白いと思うが、そのパターンはもう飽きた。

探偵小説としては銚子に毒を誰が盛ったのかという論理説明に終始していて、矢吹得意の本質直観が出て来ないので全体的に地味で読んでいて面白くない。かといって「天啓シリーズ」のようなメタミステリにも成りきれてない。「熾天使の夏」とエラリー・クイーンの「Yの悲劇」は事前に読んでないと意味不明な箇所も多く、読者をかなり制限していると思う。

天皇崩御とともに伝奇小説の終焉。天津神である天皇直系と国津神の子孫の契約。所々面白そうな話題もあるが、残念ながら肝心の殺人(未遂)事件とうまくからまってない。(思想)評論家>ストーリーテラーとなっていて、矢吹シリーズでこれをやられるのはつらい。ミステリーとして小説に徹して欲しかった。ナディアの成長が今後に期待させるものがあるが、次の作品を読めるのはいつになることやら。