燐光群「ワールドトレードセンター」@下北沢ザ・スズナリ

2時間10分休憩なし。燐光群を観たのは何年ぶりだろ?CVRを観て以来だから、4年ぶりぐらいか?

題名通り9.11の同時多発テロの一日のできごとを芝居にしているが、坂手洋二が実際にNYにいた当時の実体験を基に書いた内容で、正直拍子抜けした。中山マリが米のテロに対する他の軍事行動について触れた台詞を少し言うが、基本はNYで働く日本人の立場から書いていて、結局日本にいて他人事に感じている多くの日本人と同じ。NYにいても、ツインタワーという建築物が消えたうわべの出来事しか見えていない。いや、わざと見ていないのか。

9.11を題材した芝居はたくさんあると思うし、犠牲者の悲惨な姿や救助活動で死んでいった消防士など、表現する物はいっぱいにあるだろう。でも、燐光群らしく、そういった直接的表現はしないで、直接被害に遭わなかったマンハッタンのミッドタウンのオフィスが舞台となっている。でありながら、特に背景を掘り下げるでもなく、淡々と周辺にいた人々の一日を描くだけで、中途半端に思う。これではチェルフィッチュとか静かな演劇を観るのと何ら変わらない。

出演者にブロードウェイのアンダースタディ役がいたが、「宇宙戦争」に出ていた役者らしい。ワークショップのようなエクササイズをしてアクセントをつけているが、この人を出すことが足枷になったような気もする。坂手が日和ってるのだけかもしれんが。川中健次郎を久しぶりに観て、大滝秀治のように昔と演技が変わらなくて笑った。