最近読んだ本

新シリーズ。若い女学生が主人公の一人称語りというのは、いつもながら。
ベッキーさんというキャラクターが少女マンガっぽくて、かっこよすぎであるが、昭和初期の財閥のお嬢様という主人公の設定からして、北村ワールド特有なので、特に違和感なし。謎解きはいつものように日常生活の謎の範囲で殺伐としなくて、(美?)少女探偵もの。

最近は執筆ペースが遅いように思うし、何年かおきに北村作品を読むというのは気分転換によいかも。

スイス時計の謎 (講談社文庫)

スイス時計の謎 (講談社文庫)

凡作続きのいつもの国名シリーズと思いきや、タイトルの短編はストレートな本格推理物で久しぶりに鳥肌たった。論理パズルもすごいという感じでないけど、こういうのもあるのかと意表をつかれた感じ。

月夜の晩に火事がいて (創元推理文庫)

月夜の晩に火事がいて (創元推理文庫)

こういう小説を死ぬ前に読めたことはラッキーだと本気で思う。
「ミミズクとオリーブ」「嫁洗い池」がよかったし、創元推理文庫のシリーズははずれがないので、期待していないことはなかったが、アガサクリスティやエラリークイーン、横溝正史など、古くから手垢がついた童謡殺人ものということで、なんとなくパターン認識していたので、いい意味で裏切られた。

奥さんに先立たれ、探偵となるが生きているも無気力状態の主人公と年齢が近いせいか、精神的に波長が合う部分も多い。出身地の香川の料理描写がうまいのがいつも通り。

火事があった家に、簡易台所を作るために、山猫のママが電気屋工務店を呼んだりするシーンがあるが、本格ミステリでは通常考えられない。竹本健治とか鯨統一郎とか、登場人物をあえて記号化したロジック型のミステリと違って、トリックやロジックに関係ない無駄が多いというか文学的である。

設定からすると、横溝正史だが、なぜか「この子の七つのお祝い」を思い出した。映画でしか観てないし、ストーリーも全然似てないが。

イミコさんの変な日本語の会話が秀逸。