最近読んだ本

タイトル通りの詩人萩原朔太郎を探偵にしたミステリ。処女作からそうだけど、この人の小説は内容がどんなに変わっていても、どれも軽くて読みやすいのが好き。史実をどこまで取り入れているのかよくわからないけど、与謝野晶子らの当時の女流詩人との合コンとか現代用語を適度にちゃかして使っていたり、登場人物もかなり強引なところがあるが、設定の強引さに比べてトリックは割と普通だし、ミステリとしても成り立っている。
悪魔のラビリンス (講談社文庫)

悪魔のラビリンス (講談社文庫)

江戸川乱歩の通俗小説(土曜ワイド劇場で昔やった天知茂明智小五郎シリーズの原作となった「蜘蛛男」や「悪魔の紋章」など)を忠実に再現しながらよりグロテスクにした作風は初期の蘭子シリーズと共通している。時代背景が昭和30年代後半だし、犯罪の描写が古臭い部分もあるが、江戸川乱歩の倒錯嗜好や幻想的な要素ばかり取り上げた、「屋根裏の散歩者」「D坂の殺人事件」などの実相寺昭雄の映画に比べたら、二階堂の方が江戸川乱歩を初めて読んだ時の面白さを出していると思う(もちろん、実写と小説の違いはあるけど)。土曜ワイドの天知茂明智小五郎シリーズは、予算が少なく撮影技術が古いせいか、今見るととてもしょぼく見えてしまうが。
今回「悪魔のラビリンス」という怪人二十面相のような探偵の適役が登場することでより、一見ジュブナイルとして読まれてしまっている少年探偵団シリーズのような感じになるかと思いきや、蘭子シリーズの面白さは健在。
幽霊刑事 (講談社文庫)

幽霊刑事 (講談社文庫)

大阪万博でやった犯人当てのクイズ形式のイベントが原案だけに、殺された刑事が幽霊となって捜査するという映画やTVドラマなどにありがちな設定で、トリックは有栖にしては平凡。2001年の本格ミステリベスト8位になったそうだけど、東野圭吾の作品や去年ヒットした「世界の中心で愛を叫ぶ」などわかりやすいストーリーが流行る最近の小説界を象徴している作品。しかし、安直のストーリーの割りには全体的にできはよいし、感情移入できて幽霊が存在する世界観の表現もうまいと思う。和製エラリークイーンと呼ばれる論理思考の本格作家の作風から意外に思われるかもしれないが、作家アリスシリーズにも人情話がたまにあるし、学生アリスシリーズは青春小説と思っているので、あまり違和感なかった。
暗闇坂の人喰いの木 (講談社文庫)

暗闇坂の人喰いの木 (講談社文庫)

好きな割りには積読が多い島田荘司。「水晶のピラミッド」「アトポス」と出るたびにどんどんうっとおしくなってくる松崎レオナの初登場作品なのと、「病院坂首縊りの家」を意識したようなタイトルがあまり食指が動かないでいた理由。確か犯人は「アトポス」でネタばれしていたと思うけど、犯人当てはあまり興味ないので、個人的には関係なし。知っていてもつまらなくなる作品ではないと思う。後続作品に比べて御手洗が最初から登場しているので、割と飽きずに読めた。